高粘度材を扱う現場のメンテナンス、洗浄と分解の勘所
塗布工程の改善をお手伝いしている森下です。
前職では電子部品メーカーの生産技術部に18年おりまして、シリコーンやエポキシの自動塗布ラインをいくつも立ち上げてきました。
そこで一番泣かされたのが、装置の性能ではなくメンテナンスでした。
高粘度材を扱う現場では、洗浄と分解のやり方ひとつで、翌日の立ち上がりが30分にも3時間にもなります。
この記事では、私が現場で身につけた洗浄と分解の勘所を、安全衛生の話も含めて整理します。
目次
なぜ高粘度材のメンテナンスは厄介なのか
まず、高粘度材が普通の液体と違う点を押さえておきます。
接着剤やペースト類の多くは、チキソトロピー(揺変性)という性質を持っています。
撹拌などの力が加わると粘度が下がり、静置すると時間をかけて元の粘度に戻る現象です。
プライミクス株式会社の解説記事文系でもわかるレオロジー|チキソトロピーとレオペクシーでは、ペンキを例に「塗るときは柔らかく、塗った後は垂れにくい」挙動として説明されています。
これは塗布には都合がいいのですが、メンテナンスでは逆に働きます。
装置を止めた瞬間から、流路に残った材料はどんどん粘度を取り戻していくからです。
厄介さの中身を分けると、だいたい次の3つに集約されます。
- 流路やノズル内に残った材料が固着し、翌日には抜けなくなる
- フィラー入り材料が摺動部を少しずつ削り、吐出量のバラつきとして表面化する
- 洗浄に強い溶剤が必要になり、作業者の安全衛生の管理が発生する
洗浄の勘所は「止めた直後」と「溶剤の選び方」
洗うタイミングを設計に組み込む
洗浄で一番効くのは、実は技術ではなくタイミングです。
稼働を止めた直後、材料がまだ流動性を保っているうちに流してしまえば、作業は驚くほど軽くなります。
私がよくやっていたのは、終業10分前を洗浄時間として作業標準に書き込んでしまうやり方でした。
「時間があれば洗う」にすると、忙しい日ほど後回しになり、翌朝の詰まりとして返ってきます。
材料が温度で粘度を変えるタイプなら、タンクやホースにヒーターを入れて温度を管理する手もあります。
洗浄時の抜けやすさが変わってきます。
溶剤は材料基準だけで選ばない
洗浄溶剤は、つい「よく落ちるもの」で選びがちです。
ただ、屋内で溶剤を使う洗浄作業には法令上の要件がかかります。
厚生労働省の有機溶剤中毒予防規則では、第3章で局所排気装置やプッシュプル型換気装置などの性能が定められています。
洗浄場所の換気設備が要件を満たしているかは、溶剤を決める前に確認しておくべき項目です。
もう一点、化学物質のリスクアセスメントもセットです。
労働者健康安全機構のケミサポでは、リスクアセスメント対象物の検索方法や対象物質リストが公開されています。
使おうとしている溶剤が対象物かどうか、CAS番号で調べられます。
分解の勘所は「分解しやすさで装置を選ぶ」こと
分解性は導入前に確認する項目
分解洗浄の負担は、現場の工夫でどうにかなる部分と、装置構造で決まってしまう部分があります。
後者はどれだけ頑張っても縮まりません。
そのため私は、装置選定の段階で次の点を必ず聞くようにしています。
- ポンプ部やノズル周りが専用工具なしで外せるか
- 材料が滞留するデッドスペースがどこにあるか
- 摺動部やシールが消耗品として単体で手に入るか
- 実材料でのテストを事前にさせてもらえるか
とくに4つ目は重要です。
カタログの粘度上限は目安であって、フィラーの量や硬化特性は材料ごとに違います。
自社の材料を持ち込んでテストできるメーカーかどうかで、導入後のトラブルの量がまるで変わります。
高粘度・高フィラー材を前提にした機種を見る
高粘度材専用に設計された装置は、耐摩耗性への配慮が構造に入っています。
たとえばナカ・リキッド・コントロール株式会社のプランジャポンプ式P-FLOWシリーズHタイプは、粘度1〜1,050,000mPa・s、最大吐出圧力19.6MPaという範囲をカバーし、特殊材質でポンプの耐摩耗性を高めていると案内されています。
仕様の詳細は高粘度材に対応したディスペンサーの製品ページで確認できます。
こうしたスペックを見るときのコツは、上限値だけでなく「自社材料が真ん中あたりに収まるか」を見ることです。
上限ぎりぎりで使う装置は、摩耗も詰まりも早く出ます。
まとめ
高粘度材の現場でメンテナンスの負担を減らすには、順番があります。
- 止めた直後に洗う運用を、作業標準として決めてしまう
- 洗浄溶剤は落ちやすさだけでなく、換気設備とリスクアセスメントの観点も含めて選ぶ
- 分解しやすさは装置構造で決まるので、導入前に実材料テストまで含めて確認する
洗浄と分解は地味な作業ですが、ここを設計しておくと、朝の立ち上げで慌てることがなくなります。
まずは自分の現場で、洗浄がいつ・誰の担当になっているかを確認するところから始めてみてください。
最終更新日 2026年8月4日 by modemee